ノーラン『オデュッセイア』感想。帰るだけなのに、とにかく遠い

ジェイソン・ステイサムの『シェルター』を観に行ったら、田舎の映画館ではそもそも上映していなかったJOBAです……。

せっかく来たし、何か観て帰ろう。そこで代わりに選んだのが、クリストファー・ノーランの『オデュッセイア』。予告も観てない、あらすじも知らない、前情報ゼロでの鑑賞です。

そんなわけで、ここからは『オデュッセイア』の感想をネタバレありで書いていきます。ギリシャ神話をほぼ知らない状態でも楽しめたのか、どこで刺さったのか、そのへんを中心に。

先に言っておくと、今回もラストまで触れます。未見の人はご注意を。

映画『オデュッセイア』公式ビジュアル
The Odyssey Movie (@odysseymovie) on X
Largest Screens On Sale Tomorrow at 9am PT / 12pm ET. Experience The Odyssey shot entirely with IMAX film cameras in theaters 07.17.26.

『オデュッセイア』はどんな話か

トロイア戦争に勝利したイタケーの王、オデュッセウス。あとは故郷に帰るだけ……のはずが、神々や怪物に行く手を阻まれ、帰り道に何年もかかってしまう。その間イタケーでは王は死んだものと思われ、妻ペネロペのもとには求婚者たちが押し寄せている。

帰るだけ。なのに帰れない。話はシンプルなのに、とにかく遠い。

マット・デイモン、いつのまにか渋い

まずは主演のマット・デイモン。

ジェイソン・ボーンのイメージが強かったけど、いつのまにかめちゃくちゃ渋い役者になってた。顔に刻まれた年季。長い旅ですり減っていく王の疲れ方が、演技というより「そういう人」に見える。

そして息子テレマコス役のトム・ホランド。ついこの前スパイダーマンで観たばかりなのに、スーツを脱いだだけでこんなに新鮮に見えるのかと。父の帰りを信じて待つ息子。ピーター・パーカーとはまた違う、まっすぐな若さがあった。

さらにスパルタ王メネラオス役のジョン・バーンサル。またこの人。スパイダーマンではパニッシャー、今回は王様。どっちにしても、出てくるだけで画面が締まる。いい役者です。

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神話とリアルの絶妙なバランス

正直、ギリシャ神話はFGOでしか知らなかった。

キルケー、ポセイドン。名前は知ってる。でも、どんな物語の中にいるキャラなのかは知らなかった。それが今回、ちゃんと物語の中で動いている。キルケーの島で部下たちが豚に変えられるシーンなんかは、ゲームで見ていたキャラの「元ネタ」を初めて観た感覚でした。

面白いのは、神話なのにどこか地に足がついていること。一つ目の巨人や魔女が出てくるのに、戦争の生々しさ、兵士の汚れ、船の上の飢えはやたらリアル。ファンタジーと現実の境目が、ちょうどいいところにある。

前情報ゼロで観た自分には、この「神話を知らなくても物語として追える」作りがありがたかった。もちろん原典を知っていればもっと拾えるものはあるんやろうけど、最低限「家に帰りたい男が、次から次へと災難に巻き込まれる」という一本の線はずっと見失わない。難解なノーラン映画を覚悟していたので、そこは良い意味で裏切られました。

トロイの木馬で思い出したブラッド・ピット

トロイの木馬のシーン。

ここで、子どもの頃に観た『トロイ』を思い出した。ブラッド・ピットのアキレス。あの筋肉と、盾ごと踏み込む戦い方。当時はただただ「かっこいい」で観てた。

で、後から知ったんだけど、ノーランって実はその『トロイ』の監督候補だったらしい。準備まで進めていたのに、結局は別の監督に決まったそう。

20年越しに「自分ならこう撮る」をやったのが今回のトロイの木馬なんやと思うと、ちょっと胸が熱い。たしかに、木馬のシーンの気合いの入り方は尋常じゃなかった。

最後の猟犬で大号泣

多くの犠牲を払い、仲間を失い、それでも最後にオデュッセウスは帰ってくる。

そして、猟犬。

20年ぶりに主人と再会した老犬が、そのまま息を引き取る。

オデュッセウスは「この場所に埋めてやってくれ」と頼む。

その場所は、息子が豚飼いから聞かされていた、父と猟犬が出会った場所だった。

「猟犬と出会った場所に埋葬するんですね」

目の前のボロボロの男が、父オデュッセウスだと気づく瞬間。

ここで大号泣。

名乗ったわけじゃない。顔を見てわかったわけでもない。犬とどこで出会ったか。人づてに聞いていた、家族しか知らない小さな思い出でつながる。20年分の時間が、埋葬の場所ひとつで埋まる。

犬の最期と親子の再会が、同じ場面で起きるのはずるすぎる。

インターステラー以来の号泣量。

思えばインターステラーも、マット・デイモンが出ていて、ノーランが撮っていて、テーマは「帰る」話だった。ノーランの帰還モノに、JOBAはたぶん弱い。

ただ、惜しかった点

ひとつ引っかかったのが、オデュッセウスが流れ着いた島で出会う女性。

漂流の末、ボロボロでたどり着いた島で出会う女性がいるんだけど、観ながら「この人誰?」となった。前情報ゼロで観たJOBAも悪いんやけど、神なのか人間なのか、どういう立ち位置なのかがわからない。原作を知っている人ならピンとくるんやろうけど、ギリシャ神話がFGO止まりのJOBAには説明が足りなかった。

登場人物が多い作品なので、全員を丁寧に紹介するのは無理なのもわかる。わかるけど、観終わってから調べてやっと「あ、そういう人やったんか」となるのは、ちょっともったいない。

『オデュッセイア』の評価はどうか

観終わってから、他の人の感想も漁ってみた。

「ノーラン史上最高傑作」という声がかなり多い。マット・デイモンとアン・ハサウェイのキャリア最高の演技、という評価も見かけた。ノーラン作品にしてはわかりやすい、3時間近くあるのに長さを感じない、という感想も多い。

一方で、原作ファンからは厳しい声もある。ホメロスの原作とテーマが違う、ノーランが自分の思想を語るために神話を素材にしている、という批判だ。原作を知らないJOBAにはそこはわからないけど、そういう見方があるのも頷ける。

まとめ

神話の壮大さと、帰りたい男の執念。そして最後は、妻と息子と猟犬。

派手な映画だと思って観に行ったら、最後の最後に、いちばん小さな場面で泣かされた。

ステイサムに振られて、ノーランに泣かされた。前情報ゼロで観たからこそ、あのラストがまっすぐ刺さったのかもしれない。

ノーラン作品は映画館で観ろ、とよく言われるけど、今回は本当にそれ。全編IMAXフィルムで撮影しているらしいので、観るならぜひ大きなスクリーンで。

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